Big Bill Broonzy – Big Bill's Blues (1968)
Big Bill Broonzyの死からちょうど20年経った1978年、Broonzyの弟分であるブルースマンMuddy Watersは時の合衆国大統領Jimmy Carterに招かれ、目の前でブルースの演奏を披露した。
奇しくも本作に収録された夢オチもののブルース「Just A Dream」には、ほとんど同じ内容のヴァースが存在する。〈俺はホワイトハウスに行った。でもそれはただの夢だったんだ…〉。確かに、貧しい小作農出身の黒人が大統領と握手を交わすなど、Broonzyの時代なら考えられない出来事だっただろう。Watersはそんな夢物語を数十年ごしに現実にしてみせたのだった。
このアルバムにはWatersをはじめとするシカゴ・ブルースマンの模範となった、Broonzyの戦前の傑作が多数収録されている。音楽スタイルも実に様々で、スイングするトランペットをフィーチャーした「You Do Me Any Old Way」や古典的なバラード「Big Bill Blues」から、Broonzyのギターがさく裂する「Oh Yes」までカバーされている。「Southern Flood Blues」は南部における水害の恐怖を歌っているが、これは戦前のブルースにおいてはBessie SmithやCharley Pattonも歌った定番のテーマでもある。
特に強力なのは優れたピアニストを伴った編成のナンバーで、「Trucking Little Woman」ではJoshua Altheimerが軽快なブギウギ・ピアノを聴かせる。「When I Been Drinking」と「All By Myself」では若き日のMemphis Slimが伴奏をしているのだが、どちらの曲も後の彼のレパートリーにしっかりと加わっているのが興味深いところだ。