Rick Nelson – Rick Nelson In Concert (1970)
1960年代後半にリリースしたシングルがいずれもセールス不振に終わり、Rick Nelsonの栄光は遥か昔のことだと誰もが思い始めていたころ、Nelsonはこのアルバムで存在感と自信を再びシーンに示してみせた。LAのクラブ〈トルバドゥール〉で録音されたこのコンサートからは、Bob Dylanのカバー「She Belongs To Me」のシングル・カットがスマッシュ・ヒットとなった。同時に「Believe What You Say」のようなかつての名曲は、若々しいロックンロールから成熟を感じさせるカントリー・ロックに生まれ変わってもいる。
本作は、Eagles結成前夜のRandy Meisnerがベースとコーラスで参加していることでも有名だ。しかしこのアルバムの最も大きな美点は、Buck Owensのギタリストを務め、後にMeisnerと共にNelsonのThe Stone Canyon Bandにも参加するTom Brumleyのスティール・ギターにほかならない。かつてティーンエイジャーのNelsonをJames Burtonのギターが支えたように、本作ではBrumleyの伸びやかなプレイがカントリーの美しいハーモニーを彩ってみせるのである。
至上のラブ・ソング「Hello Mary Lou」は、以前はダブル・トラックで装飾されていた自身の歌声よりもはるかに肩の力が抜けていて、自然な魅力にあふれている。演奏のアレンジもまた的確で、後の多くのロック・バンドはこの歌をカントリー調で歌うようになった。
今思えば、ラストに「I Shall Be Released」が歌われているのはなんとも示唆に富んだ演出といえる。久々のヒット作となった本作は70年代以降のNelsonの方向を決定づけ、その音楽性は72年の傑作『Garden Party』で結実していくことになる。