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Sonny Terry & Brownie McGhee – Home Town Blues (1965)

 1964年にBob Shadによって設立されたメインストリーム・レーベルは、Ted NugentやJannis Joplinがデビューした傍ら、ジャズやブルースの古い録音を広める再発レーベルとしての顔も持っていた。本作はその膨大なカタログの中でも指折りの名編であり、90年代に入って収録曲が大きく拡充されたおかげでさらにブルースの入門に最適なアルバムになった。
 録音はまだフォーク・ブームに呑み込まれる以前の40、50年代のニューヨークで行われた。「Stranger Blues」と「Goin' Down Slow」はもっともよく知られた彼らのシンプルなスタイルだ。Sonny Terryの名人芸はどの曲でも相変わらずなものの、Brownie McGheeは時おりエレキギターを弾いているし、「The Woman Is Killing Me」のようなハウス・ロッキンなナンバーも聴ける。シカゴ・スタイルの名曲「Feel So Good」ではとても軽快なピアノをフィーチャーしているのも印象的で、クレジットはほとんど不明だが一部には"Big Chief" Ellisが参加していると言われている。
 「Lightnin's Blues」は特に歌詞が興味深い。McGheeがご存じLightnin' Hopkinsにギター勝負を挑みにテキサスへ向かおうとするこの歌は、言葉の持つ不敵さの中にも、好敵手に対するある種の気安さのようなものも感じられる。心なしかTerryのハープも彼らをはやし立てるように聴こえてこないだろうか。
 単なるフォーク・リバイバルに乗ったレコードと思うなかれ。彼らの叡智は、戦後間もないころからR&Bやエレクトリック・ブルースをものにしていたのである。