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Jo-Ann Kelly – Jo-Ann Kelly (1969)

 1968年のメンフィス・ブルース・フェスティバルでの演奏をきっかけにCBSと契約したJo-Ann Kellyは、当時ブリティッシュ・ブルースの渦中にいたKelly姉弟の姉にあたる人物だ。彼女はソロ第一作となったこのアルバムで古典ブルースを多く取り上げ、ポップ音楽の源流であるデルタ地帯へと思いを馳せている。オリジナル盤では収録曲のほとんどが彼女の作としてクレジットされているが、それは誤りだ。
 Kellyはアンプを通さないギター一本と力強い歌声だけで、この素晴らしいレコードを作り上げた。同じく女流ギタリストであるMemphis Minnieのカバー、そしてCharley PattonやRobert Johnsonといったカントリー・ブルースマンたちが残したナンバーをまるでけじめをつけるかのように忠実になぞっていくが、そこには弟のDave Kellyとよく似た燃えるような職人的こだわりが通底している。
 「Finger Print Blues」はDaveの同年のアルバム『Keeps It In The Family』でも披露された一曲で、男をなじる見事なブルース「Sit Down On My Knee」は戦前から歌われていたかと錯覚するような彼女のオリジナルだ。彼女がとてつもない表現力を持ったギタリストであることをはっきりと証明するのが「Come On In My Kitchen」だろう。息をのむようなスライドの音色にはJohnsonの原曲よりも数段ねばついたアレンジが施されており、アルバムのハイライトと呼ぶにふさわしい一曲となっている。