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The Jam – In The City (1977)

 称賛と罵声の中で登場したThe Jamは、1970年代のパンク・シーンの中でひときわ異彩を放っていた。The Clashの強い政治性やThe Sex Pistolsの尖ったファッションのいずれにも与しなかった彼らのスタンスは、〈復古主義〉とやゆ●●されもしたモッズ・スタイルのスーツや、The Whoのような60年代のUKバンドたちに似たダイナミズムに、これ以上ないほど明快に表れていた。
 Paul Wellerがみずみずしいポップ感覚をもって若者を力強く讃える名曲「In The City」は、The Jamのキャリアに確かな追い風を与えた。このデビュー・シングルのヒットのおかげで、バンドはポリドール・レーベルの大人たちに対していくらか強気になり、弁護士を雇って契約の改善を交渉することができるようにもなった。
 The Jamの音楽づくりのインスピレーションは様々だ。「Non-Stop Dancing」はBruce FoxtonとRick Bucklerの腰の入ったビートが魅力的なノーザン・ソウルで、「Art School」や「Takin' My Love」は鋭いギターのカッティングでアルバム全体をけん引していく。怒りと勢いに任せたような「Slow Down」や「Batman Theme」のカバーといった変わり種もあるが、こうした怒りのイメージは初期のThe Jamを語るうえでは外すことのできない要素である。実際、「Sounds From The Street」の歌詞を見れば、Wellerが自身へ向けられた批判に心底ウンザリしていたであろうことはすぐに察せられる。
 『In The City』はバンドマンなら誰もがマネしたくなるようなサウンドに満ちている。しかし、このLPに通底している言いようもないピュアさは、模倣しようとしても容易にできるものではない。