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Koko Taylor – The Earthshaker (1978)

 まだ無名のシンガーだったころ、Koko TaylorはかのMuddy Watersからブルースの歌い方について含蓄に富んだアドバイスを受けたことがあるという。〈心のありったけを出せ。客席を見るんじゃなくて、目をつぶって歌ってみるのさ〉。ジャケット写真を見る限り、彼女はWatersの教えを忠実に守っているようだ。
 古巣であるチェス・レーベルが無くなってからは、Taylorは強力なエレクトリック・バンドを従えて、アリゲーターで盤石のキャリアを築いた。同レーベルの2枚目のアルバムである『The Earthshaker』は、Taylorというフィルターを通したブルースのベスト集を聴いているように思えてくる。内容は幅広く、「Let The Good Times Roll」のようなジャンプの定番に始まり、Watersの名曲をアレンジした「I'm A Woman」からノリのいいファンク「Cut You Loose」まで様々なスタイルを経由している。
 「Please Don't Dog Me」は本作のハイライトといえる強力なスロー・ブルースだ。ギターのSammy Lawhornと共にWatersを長年支えたベテランPinetop Perkinsは、Taylorののびのびとしたシャウトを巧みなピアノのタッチで飾る。かつてTaylorがチェスで大ヒットさせた「Wang Dang Doodle」(原曲はHowlin' Wolfによるもの)のセルフ・カバーでは、Abb Lockeのたくましいサックスがフィーチャーされている。