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The Misunderstood – Before The Dream Faded (1982)

 ガレージ・フリークのみならず、初期のブルース・ロックからプログレ愛好家にまで広く崇拝される一枚。The Misunderstoodは元々アメリカ西海岸で結成されたバンドで、有名DJであるJohn Peelに気に入られたのをきっかけに渡英した。ここだけ聞くとまるでJimi Hendrixのようだが、軍からの徴兵や就労ビザといった音楽外の問題が重なったのは彼らにとって大きな悲劇であった。数年の間にメンバーの入れ替わりを繰り返し、充分な創作活動が出来たとはいえず、オリジナル・アルバムも作られることはなかった。
 1982年に出た『Before The Dream Faded』は、彼らの数少ない7インチとプロモ用のデモからなる待望のLPだった。A面は66年に行われたフォンタナ・レーベルのセッションで、沈着と高揚がせめぎ合う至高のアシッド体験が味わえる。Glenn Ross Campbellのスティール・ギターをフィーチャーしたサウンドの洪水はとにかく強烈で、ボレロを思わせる「Children Of The Sun」や異国感のあるメロディの「I Unseen」の個性は特に際立っている。もうひとつ興味深いのは「Who Do You Love」だ。後身バンドであるJuicy Lucyも同曲をヒットさせたが、換骨奪胎という点においてはこちらの方が大胆な仕上がりといえる。
 B面は65年の米国録音で、R&Bヒッツの「You Don't Have To Go」と「Who's Been Talking」のカバーが当時プロモ・シングルとなった。こちらはThe Animalsを意識したようなブルースが中心で、特にJimmy Reedの「You Don't Have To Go」は、フラフラとした原曲の独特のグルーヴを再現しながらも、Rick Brownの太い歌声はまさにEric Burdonそのもの。そしてアルバムはパンクのような怒りに満ちた「You've Got Me Crying Over Love」で幕を下ろす。