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Bobbi Humphrey – Satin Doll (1974)

 1970年に新時代を迎えたブルーノート・レーベルは、LarryとFonceのMizell Brothersが取り入れたシティ・ソウルの風によって、独自のファンキー・サウンドを獲得する。かのDonald Byrdをビルボードのポップ・チャートに送り込んだ実績もあるこの兄弟は、かつてモータウンで培ってきたポップ・センスを、的確にジャズの枠組みへと落とし込むのが得意だった。
 彼らと組んで名盤『Blacks And Blues』を生んだフルート奏者のBobbi Humphreyは、まるで急かされるように新アルバムを録音した。バック・ミュージシャンも前作とあまり変わらず、King ErrissonにChuck Davis、Harvey Masonらが名を連ねる豪華な布陣だ。都会っぽい「New York Times」とギラリとした「San Francisco Lights」では、実に対照的に街の情景が描かれている。後者はRoy Ayersの「Everybody Loves The Sunshine」にも負けないくらいの暑苦しさだ。
 タイトル・トラックの「Satin Doll」は様々な歌い手がカバーしてきた名曲だが、重たい情感を込めるよりもサラリと流すように歌う方がサマになる。これは演奏にも言えることで、疾走感あふれる爽やかなアレンジに加えて、Humphreyのしなやかなフルートの音色はこのナンバーにとてもマッチしているのだ。Stevie Wonderの「You Are The Sunshine Of My Life」もとてもシンプルで、しかも原曲よりもコンパクトに収まってさえいる。
 Larryのシンセが心地よい「My Little Girl」ではHumphreyの魅惑的なボーカルが聴ける。『Satin Doll』は、一人のミュージシャンの脂の乗りきった時代を証明する素晴らしいアルバムである。