Johnny Hallyday – Rivière... Ouvre Ton Lit (1969)
Johnny Hallydayがフランス史上最も偉大なロック・シンガーであることは誰も否定などしないだろうが、彼の1969年のアルバム『Rivière... Ouvre Ton Lit』が純粋なフレンチ・ロックだとは言いがたいのもまた事実だ。本作のサウンドはMick Jones(ForeignerやSpooky Toothで知られる)が手掛けた激しいUK風ハード・ロックがさく裂しており、Hallydayのボーカルは色っぽさよりもシャウトが際立っている。同年にはいかにもシャンソン風だった「Que Je T'aime」という名曲も発表されているが、このアルバムの雰囲気とはまるで水と油と言っていいだろう。当然本作には収録されていない。
本作はフランスの歌声とイギリスの力強いロック・サウンドが融合して生まれた傑作だ。やはり目を惹くのはThe Small FacesのメンバーであるRonnie LaneとSteve Marriottが参加したナンバーで、「Voyage Au Pays Des Vivants」には名盤『Ogdens' Nut Gone Flake』を思い出すようなサイケの残り香が感じられる一方で、いわゆる〈Crossroads調〉のリフが最高な「Je Suis Né Dans La Rue」は骨太なハード・ブルースに仕上がっている。また、「Amen」や「Réclamations」で聴かれる印象的なギターはPeter Framptonによるものだ。
他にも「Je N'ai Besoin De Personne」のようなけたたましい曲もあるが、なによりの驚きは、Hallyday自身の圧倒的なボーカルがセッションのすべてをけん引していることだ。「Les Anges De La Nuit」はフルートやハープを交えた穏やかかつ神秘的なナンバーで、彼のフランス語の歌声が持つセクシーな部分が顔を見せている。