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Cab Calloway ‎– Cotton Club Revue (1958)

 真面目な話、1930年代のアメリカにおいてCab Callowayというシンガーの存在はミッキーマウスと同等の価値を持っていた。彼の歌はステージでもレコードでも不動の人気を誇り、ムーンウォークのひな型でもある軽快かつ大げさなダンスは、フライシャー兄弟の発明したロトスコープという技法によって巧みにアニメーション映画の世界へ落とし込まれ、アメリカ人の目と耳に強烈な印象を焼き付けていった。
 50年代の終わりにはビッグ・バンドの音楽が再評価(Duke EllingtonやCount Basieもこの時期に復活作を放っている)されるようになり、Callowayもかつて鳴らしたコットンクラブでの華々しいステージを再現するアルバムを制作している。だが、レコードから響いてくる途方もなくパワーに満ちた歌声は、彼の全盛期がなおも続いていることを証明しているし、古きよき豪華絢爛なバンド・サウンドも現代人にはかえって新鮮にさえ聴こえてくるから不思議だ。
 レビューの再現はA面に集約されている。『Blues Make Me Happy』というアルバムまで作ったCallowayだけに、「Born To Be Happy」という歌は彼の座右の銘のように響いてくる。女性歌手Mauri Leightonとのうっとりするようなデュエットを交えた「Sweeter Than Sweet」も素晴らしい。
 思わず笑ってしまうほどの驚異的ロング・ブレスを交えた「Minnie The Moocher」は、様々な録音がある中でも本作がベストといっていいテイクだ。ブルースの古典「St. James Infirmary」も、痛ましい内容ながら聴く者をしんみり●●●●などさせないところにエンターテイナーの威厳を感じさせる。
 Callowayはテレビや舞台などで幾度となくリバイバル的成功を見せた。中でも若い世代には映画『ブルース・ブラザース』での活躍が絶大だったが、その実、彼は常に底知れぬ実力を持つシンガーであり続けていた。今もその存在がかすむことはない。Callowayの歌は永遠である。