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Tongue And Groove – Tongue And Groove (1968)

 サンフランシスコのサイケ・バンドThe Charlatansのメンバーを中心としたグループTongue And Grooveは、不世出の女性ブルース・シンガーLynne Hughesをフィーチャーしたアルバムを2枚発表している。西海岸特有のアシッドな雰囲気をベースにしつつも、本格的なディープ・サウスの要素を取り入れたサウンドは、Hughesのクセの強いビブラートをうまく引き立たせている。いずれも、The Charlatans同様に寡作だったのが惜しくなる出来だ。
 The Charlatansから参加しているMichael FergusonとRichard Olsenの他にも、ベテランのサックス奏者Jay Miglioriやロックンロールの重鎮James Burtonによるサポートも本作の大きな魅力の一つだ。特にBurtonはブルースの古典曲「Come On In My Kitchen」で、粘っこいスタイルのドブロを披露している。ヘヴィなスロー・ナンバー「The Shadow Knows」ではFergusonがメインのボーカルを執り、Randy LewisがHarvey Mandelばりにギターを歪ませる。また、同じくThe CharlatansのDan Hicksは、録音には参加しなかったが「Fallin' Apart」という陽気なブギーを提供している。
 ブルースを歌っているからといってHughesのスタイルをJanis Joplinと比較する声は多いが、ホーンが印象的なロックンロール「Sidetrack」や、ニューオリンズ風なイントロの「Devil」など、彼女がJoplinとはまた異なるアプローチでブラック・ミュージックに接近しようとしていたのも明らかだろう。次作『Freeway Gypsy』ではHughesのボーカルが前面に押し出されるようになった。こちらも忘れがたい名盤である。