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Lyle Swedeen – Sunshine Inside (1974)

 西海岸でソングライターとして働いたLyle Swedeenは、1974年に現在では悪名高いレーベルとして知られるファンタジーから1stアルバム『Sunshine Inside』を発表した。同レーベルの権利関係のゴタつきのせいか、長いあいだ陽の目を見なかった一枚なのだが、その温かく懐かしいサウンドは今もなおコレクターを惹きつけてやまない。
 タイトル・トラックはワルツのリズムやバロックの風合いを取り入れた玄人志向の一曲で、同時に迫力と安定感のあるリズムが心地よく、まるでLittle Featのような気安さもある。同じくダンス・チューンの「Can't Dance Without Music」は西海岸らしいカントリーのからりとした明るさが、南部のサウンドとうまく結びついた一曲だ。「Of Your Precious Time」は一途な愛情が胸を打つバラードの名品である。
 様々なカバーを生んだBob Dylanの「It Takes A Lot To Laugh」も、素晴らしいギター(おそらくJefferson Kewleyのもの)とツイン・キーボードの掛け合いで見事なスワンプ・ロックに仕上がっており、アルバムのハイライトである。女性コーラスをフィーチャーした「It's All Over Now」と合わせて楽しめるだろう。
 全体を通して賑やかなアルバムだが、「Easily」のようにフォーク・ロックにシンセのようなサウンドを取り入れた曲もあるのが面白いところだ。こうした意外性に満ちた作風はSwedeenの隠れた持ち味で、長いブランクを経て2013年に発表された『New Treasures, Vol. 1』にも実はさりげなく息づいている。