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Sonny Terry – Complete Recorded Works In Chronological Order (1994)

 戦時中はミュージシャンにとっては悪夢のような時代だった。従軍や混乱の中で録音の機会が失なわれたブルース・マンたちにとっては特にだ。
 名サイドマンSonny Terryの3~40年代の録音をまとめたこのCDは、おなじみのBrownie McGheeのほかにWoody GuthrieやBlind Boy Fuller、Washboard Samといった錚々たるクレジットが連なっている。これは彼のカントリー・スタイルのハープが戦時下においても多くのミュージシャンに求められていたことの証明だ。
 McGheeと出会う前は、Terryの相棒といえばギタリストのFullerだった。〈Oh Red〉の名で知られるGeorge Washingtonのウォッシュボードを交えた軽快な「Harmonica Stomp」はFuller's Boysの名義で発表されたにぎやかなナンバーだ。
 また、Terryは一時期ニューヨークのフォーク・シンガーと共同生活をしていたことがあり、その中にはPete SeegerのほかにGuthrieの姿もあった。毎週月曜日に行われていたギグにはAlan Lomaxも顔を出しており、「John Henry」のようなトラディショナル・ナンバーの中に、当時の演奏の雰囲気がどのようなものだったのかをうかがうことができる。特にGuthrieと共演した「Lonesome Train」の出来はアルバムの中でも群を抜いたもので、トレイン・ソング特有のハイテンポの中で繰り広げられるブロウには思わず息をのむ。
 Terryの代名詞である「Fox Chase」も未発表を含めて4曲収録されている。ラストの3曲は55年に行われたAlonzo ScalesのセッションにMcGheeと参加したときの貴重な録音だ。こちらはうって変わってモダンなバンド・サウンドを展開しているのがとても興味深い。