The Sensational Alex Harvey Band – The Impossible Dream (1974)
スコットランドをルーツに持つSAHBは、Alex HarveyとTear Gasを母体としたバック・バンドからなる。実のところ、60年代の中ごろにブルース・シンガーとして既にデビューしていたHarveyは、ほかのメンバーより二回り以上も年上のフロントマンだった。ソウルに裏打ちされたHarveyのリーダーシップは、舞台演劇の要素を取り入れた大仰なパフォーマンスやきらびやかな音楽性とともに、70年代のグラム・ロック・シーンに強烈な印象を与えた。
物語調の「Vambo」は、ステージではHarveyのストーリー・テリングとともに披露されるのが定番で、ピエロのような白塗りをしたギタリストZal CleminsonやセクシーなベースマンChris Glenといったメンバーたちが、ヘヴィなリフでそれを盛り上げていく。「Sargeant Fury」はHugh McKennaが古風なスイング・ピアノを鳴らし、一方ロックンロールのスタンダード「Money Honey」では、Ted McKennaがハードなドラムを聴かせる。
女性コーラスとスコットランド民謡を思わせるバグパイプのゆったりとした音色が印象的な「Anthem」は、当時のライブのクライマックスを飾っていた美しい一曲だ。彼らなりの郷愁を描いたこの歌はシングル・カットされ、意外にもオーストラリアでスマッシュ・ヒットを果たした。
SAHBのの柔軟性(というよりは貪欲さ)と実力が最高のレベルで発揮された『The Impossible Dream』は、前年の傑作『Next...』を超える成功を収めた。