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Heavy Vegetable – The Amazing Undersea Adventures Of Aqua Kitty And Friends (1994)

 後に続いていくRob Crowの膨大なバンド遍歴の原点を飾る一枚。サンディエゴの友人同士で結成されたHeavy Vegetableは、いくつかのシングルやコンピ盤への参加を経て、1994年の本作でアルバム・デビューを果たした。長ったらしくふざけたタイトルとは裏腹にほとんどのトラックは2分にも満たないものの、Crowの奏でるサウンドそのものはSlintのように生々しく、難解なリズムには近寄りがたさのようなものがあった。しかし、女性ボーカルElea Tenutaが呟くように歌うパートは、Deerhoofほど異様ではないがそれでも独特の魅力をバンドにもたらしている。
 「Eight」や「Head Rush」といった簡潔な物語に表れているTenutaやCrowの不真面目な態度は、90年代オルタナのレイジーなサウンドとアルバムのジャケットが放つゆるい雰囲気と合わさって、どこかミステリアスなものになっている。一方で、作中で特にハードコアに寄った「Black Suit」、暗い独白調の「Junior」が持つとげとげしいイメージは、若者特有の家族に対する複雑な心情を描き出す。ナンセンスな「Johnny Pig」は、1分40秒の中に3曲分くらいの楽曲のアイデアを無理やり詰め込んだかのような性急なナンバーだが、よく考えればこれはなんとも贅沢なことである。
 このアルバムの素晴らしさは、オルタナの持つつかみどころの無さとメロディのキャッチーさが鮮やかに両立しているところにある。猫のジャケットに一目ぼれして本作を衝動買いしたとしても、その判断があなたをがっかりさせることは無いだろう。