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John Lewis – Statements And Sketches For Development (1976)

 MJQ時代はソロ・アーティストとしての活動に大きく注力することが少なかったJohn Lewisは、1974年ごろにグループが活動停止をアナウンスしてからはコロムビアの系列レーベルから自身の作品をコンスタントに発表した。本作は76年の来日時に東京のホールで録音されたもので、日本国内でしか発売も再発もされていないが、同時にアルバム全体が完全なソロ・ピアノで構成されている、という点で特筆に値する。
 また本作は、レパートリーの多くが往年に生まれた自身のオリジナルであるのも興味深く、例えばヨーロッパへ思いをはせる「Milano」やギタリストDjango Reinhardtに捧げた「Django」などは、50年代の前半からMJQで演奏してきた曲だ。いずれも56年の名盤『Django』の収録曲であることは言うまでもないが、今までの演奏とは全く異なる内省的な美しさに息をのまずにはいられない。
 「2° East 3° West」はLewisの初期のソロ・ワークのなかで生まれた名曲だ。タイトルは2人の東部人と3人の西部人からなるクインテットの編成を示しており、当時はギターを交えたソロの応酬が聴きものだったのだが、本作でLewisはあえてこの曲をシンプルなブルースとして再解釈を施している。
 スタンダードも実に新鮮だ。特に「'Round Midnight」は圧巻で、Thelonious Monkの原曲を意識しつつも、端々にLewisらしい優雅なタッチがちりばめられている。