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Kate Taylor – Kate Taylor (1978)

 Kate Taylorは1971年のアルバム『Sister Kate』でまず世間の注目を集めた。彼女の魅力は同作のプロデューサーでもあったPeter AsherやAhmet Ertegunのような業界人を虜にしたソウル音楽の素養で、これは彼女の兄であるJames Taylorとはまた異なる才能だった。しかし、出産や子育てに追われたこともあって、そこから数年間彼女のキャリアには空白が生まれた。
 だがこれで終わっていいわけがないと、Jamesは77年に彼女の久々のシングル「It's In His Kiss」のプロデュースを自ら買って出る。Betty Everettが60年代に「The Shoop Shoop Song」として歌ったR&Bを、JamesとKateが洗練されたファンキー・サウンドに乗せてデュエットしたのが好評を受け、続いて行われたアルバム・セッションには大勢の豪華なミュージシャンが参加した。中でもStuffのメンバーらやThe Brecker Brothersといったジャズ・ファンク界の実力派が強力なサポートを見せ、「A Fool In Love」や「It's Growin'」など数々の名演が生まれた。
 Taylorファミリーの深い絆も本作の見どころの一つだ。「Stubborn Kind Of Woman」にはAlexとHughがコーラスで参加し、弟のLivingstonは「Rodeo」という穏やかなカントリー風のナンバーを提供している。「Slow And Steady」はJamesのペンによる美しいバラードで、彼女は過去と未来を含めた長い人生の時間を、繊細なギターのメロディに乗せながら優しく肯定していく。
 Kateは寡作なシンガーだが、そのぶんアルバムの一枚一枚が本作のように濃密なパワーを秘めている。2021年の『Why Wait!』ではAsherを50年ぶりにプロデューサーに迎え、真にソウルに満ちた歌声を聴かせてくれた。