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Michael Nesmith – Pretty Much Your Standard Ranch Stash (1973)

 The Monkees解散後のMichael Nesmithはカントリー・ロックの道をまい進し、RCAレーベルから何枚ものアルバムを発表した。自身のバンドも何度か編成しなおして来たが、その中でも優れたスティール・ギタリストであるRed Rhodesだけは不動のメンバーとして常に寄り添い、ナッシュヴィルやカリフォルニア・スタイルといったNesmithの目指す幅広いサウンドの実現に貢献してきた。
 1973年の本作はRCAの最終作となったLPである。冒頭の「Continuing」からして、Nesmithの洗練されたソング・ライティングとRhodesのリッチなギターから生まれるサウンドの魔法は相変わらずだ。「Some Of Shelly's Blues」はThe Monkees時代にお蔵入りになっていた曲のリメイクで、当初からカントリー・ロックを強く意識したナンバーでもあったが、リラックスした本作のバージョンがやはり素晴らしい。
 長らくオリジナル主義だったNesmithには珍しく、本作のB面はカントリー・ソングのカバーで構成されている。「Prairie Lullaby」ではJimmie Rodgersのヨーデルに、メドレー形式の「The Back Porch And A Fruit Jar Full Of Iced Tea」ではBill Monroeのブルーグラスに挑戦するなど、A面にも負けないくらい興味深い内容となっている。
 注意しないと見落としてしまうが、レコード・ジャケットに写ったNesmithの顔の横には〈買ってくれ〉というメッセージが小さくあしらわれている。これは72年の前作『And The Hits Just Keep On Comin'』に続く、音楽業界へのNesmith流のちょっとした皮肉だ。だが彼のファンはそれを悲観することは決してない。レコードの中身を聴けば、Nesmithは自分のやりたい音楽を思いきりやっている、という確信を持つことができるからだ。