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The Outlaw Blues Band – Breaking In (1969)

 60年代モダン・ジャズの世界は、Bob Thieleを中心に回っていたようなものだ。芸術とセールスをいとも簡単に結びつけてしまう才覚を持つこの敏腕プロデューサーは、ブルースを開拓するために新たにブルーズウェイ・レーベルを立ち上げた。ここからはB.B. Kingをはじめとした大物ブルースマンが挑戦的な作品を多く発表していったが、The Outlaw Blues Bandのようにラテン風のファンクを取り入れた斬新な若手グループも在籍していた。
 彼らが真に偉大なのは、ジャズを含めた様々なジャンルに挑戦し、それに伴ってパーカッションやヴィブラフォンといった多様な楽器を導入しつつもディープ・ブルースという軸を見失っていないことだ。T-Bone Walkerのクラシック「Stormy Monday Blues」はJoe Whitemanのムード満点のサックスとヴァイブのおかげで上質なジャズに仕上がっているが、同時にLawrence Dickensの極太のベース・ラインとLeon Rubenholdのハープがしっかりとシカゴ系のサウンドにつなぎとめている。
 「Mamo Pano Shhhh」はラテンに根差した彼ら独自のナンバーで、Len Chandlerのスロー・ブルース「Plastic Man」は同年にJoe Turnerも取り上げている。アルバムの価値を大きく高めているのは「Deep Gully」だ。これはDickensの個性的なベースとPhillip Johnのサイケデリックなギターからなるアシッド・ファンクで、今聴いても強烈な印象を残す一曲だ。
 The Outlaw Blues Bandのこのユニークなビートが再評価されたのは本作から四半世紀近く経ってからのことで、De La SoulとCypress Hillがいずれも93年のアルバムの中で「Deep Gully」を印象的にサンプリングしたおかげだった。