Iron Butterfly – In-A-Gadda-Da-Vida (1968)
同年発表のファースト・アルバムですでに大きな成功を収めていたIron Butterflyは、続く本作ではレコード片面をすべて使った一大サイケデリック・ジャムに挑戦し、ロック・シーンの度肝を抜いた。
B面の大作「In-A-Gadda-Da-Vida」は、もともとキーボードのDoug Ingleが書いた「In The Garden Of Eden」というバラード曲を下地にしているが、東洋的なメロディやプロト・メタル風の重たいサウンド、さらにはRon Bushyの長尺のドラム・ソロによってアシッド・ロックの組曲に仕上がっている。さらに言えば、タイトルも呪文のような言葉(これはIngleが泥酔した状態でメンバーに曲名を伝えたせいだった)に変更されたことが、この曲の持つ神秘的なイメージに拍車をつけた。「In-A-Gadda-Da-Vida」はシングルでもヒットし、またラジオでも頻繁に流されてみるみる人口に膾炙していった。おかげで人々は、7インチ・バージョンのヘヴィなリフだけを3分間楽しむこともできたし、LPバージョンでは17分にも及ぶサイケ・トリップにどっぷりと浸ることもできた。
A面に収録されたトラックには、バンドのもう一つの魅力であるコーラスや、明るい曲調のガレージ・ロックがフィーチャーされている。「Most Anything You Want」はIngleのハスキーな歌声とアンサンブルが生み出すコントラストが印象的で、「Flowers And Beads」は特にサンシャイン・ポップに近い仕上がりになっている。「Are You Happy」のErik Brannの鋭いソロ・ギターも、本作の聴きどころのひとつだ。
特大のインパクトを持った「In-A-Gadda-Da-Vida」は、60年代の尖った音楽文化の象徴の一つとなり、広大なジャンルに影響を与えた。後のメタルやヒップホップにも引用されたのはもちろん、かのFrank Zappaも80年代のアルバムの中で、Igor Stravinskyのクラシック音楽と絡めてパロディしたりもしている。