Don Patterson with Sonny Stitt – Donny Brook (1970)
1970年代に入るとプレスティッジ・レーベルの経営は限界を迎え、会社は悲鳴を上げながら録音のストックを少しずつレコードとして発表していった。だが、それらの作品の質が依然として高いままだったのは称賛されるべき事実である。Don Pattersonは60年代ソウル・オルガンの綺羅星の一人で、彼がSonny Stittとの名コンビで68年に録音した『Donny Brook』は、熱いブルース・フィーリングにあふれたご機嫌な一枚だ。
ギタリストGrant Greenが変名Blue Grantとして参加したことでも有名で、彼の書いたタイトル・トラックの「Donny Brook」は、洗練されたギターのサウンドと、オルガン・ジャズ特有のベース・レスによる泥臭いグルーヴが同居した一曲である。「After Hours」のAvery Parrishを思い出させるような情熱的なタッチのスロー・ブルース・ナンバー「Mud Turtle」ではGreenが堂々たるブルース・ギタリストに変貌する。また、Stittのホーンがここぞとばかりに冴えているのが「St. Thomas」だ。ラテン風のリズムをより明るくアレンジしているのも実に楽しい。
メンバーのファンキーさが際立ったスタンダード「Good Bait」に続く「Starry Night」はこれまた印象に残る一曲で、ゴスペル風の一言では片付かない荘厳さがある。これは古いラジオ番組のテーマだったもので、Billy Jamesのドラムのみをバックに6分弱に渡って展開するPattersonの熱演は、間違いなく本作のハイライトだ。