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Speckled Red – The Dirty Dozens (1961)

 長いブルースの歴史の中でSpeckled RedことRufus Perrymanの名が忘れられるなど、あってはならないことである。
 弟であるPiano Red(「Mr. Moonlight」のヒットでビートルマニアにも名が知られる)が生まれるころには、彼はすでに酒場で活躍するいっぱしのピアニストであり、さらに1920年代には「The Dirty Dozen」という大ヒット曲を生み出してもいた。力強いボーカルで繰り出される巧みな言葉遊びと、それに輪をかけたようにワイルドなプレイ・スタイルはバレルハウスの理想形そのものだと言っていい。
 このアルバムの曲の多くは50年代に再発見されたPerrymanがセントルイスで録音したもので、名門デルマーク・レーベル(細かいようだがこれは正確ではない。当時の名前はまだ〈デルマー〉だった)の最初期のレコーディングの一つに数えられる。本作の「The Dirty Dozens」はピアノのテンポが気持ちいいうえ、Perrymanの語りもまさに立て板に水である。ブルースマンの持つテクニックが最大限に発揮されるナンバーだ。Memphis Slim、Kokomo Arnold、Memphis Minnieなど、この名曲をカバーしたアーティストは楽器も性別も関係なく様々で、挙げだしたらキリがない。
 長く現場での演奏を続けていたPerrymanだけに、かつての精彩は全く損なわれておらず、むしろ深みが増している。伝統的カウカウ・スタイルから(「Cow Cow Blues」)、カントリー・ブルースの名曲まで(「Highway 61 Blues」)レパートリーも幅広く、いま聴いても全く飽きる場面がない。「The Right String But The Wrong Yo Yo」は、本作では戦前と同じ様式で歌われているが、同時期のPiano Redの方はロックンロール・ナンバーとして磨き上げているというのも興味深い事実だ。