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Jane – Fire, Water, Earth & Air (1976)

 Gottfried Jankoが脱退し、初期メンバーだったWerner Nadolnyをふたたびキーボードとして迎えたJaneの5枚目のアルバムは、彼らのキャリアを代表する傑作となった。かつて万物の根源と考えられていた四つの元素をコンセプトにしているが、実際本作で重要になってくるのはシンフォニック・サウンドの壮大さとハード・ブルースの熱気という二大要素である。
 冒頭10分間に渡る「Fire」は、SEを用いながらKlaus Hessが素晴らしいギター・プレイを聴かせる。バンドのメンバーそれぞれに存在感があり、幽玄なシンセが躍る「Water」では、Martin HesseとPeter Pankaが淡々とクラウト・ロックらしいグルーヴを生むおかげで、A面のエンディングの盛り上がりは非常に個性的なものになった。
 Pink Floydの影響を色濃く受けた「Earth」を挟んで聴こえてくるのは、クラシックのボレロを引用した「Air (Superman)」のハードなメロディだ。同じくボレロの影響を感じさせていた初期の名曲「Spain」と比べると実に垢ぬけたサウンドである。Pankaによる粋なドラム・ブレイクという小技をみせつつ、Hessの鋭いギターとNadolnyの美しいシンセが絡み合いながら「The End」の素晴らしいアンサンブルへとなだれ込んでいく。
 全編を通して33分の組曲形式を採っているものの、音楽の展開自体は決して難解ではなく、ポップで気軽に聴きこむことのできる優れたプログレ・アルバムだといえる。