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Company Flow – Funcrusher Plus (1997)

 真にドープなヒップホップを生み出すにはどうすればいいのか?Company Flowの出した最適解がこの『Funcrusher Plus』だ。攻撃的な詞はもちろんのこと、ビートの伝統から完全に開放されたトラックが放つ狂気は、ジャズやファンクに束縛されていた当時のあらゆるグループに強烈な制裁を加えた。
 「The Fire In Which You Burn」に見られるミニマリズムとインド由来のサイケデリックなサウンドは、それまでのブラック・ミュージックから脈々と続いてきたヒップホップの文脈を一刀両断に分断している。「Legends」でのローファイ・サウンドもさることながら、リリックの端々に日本語をあしらった「Vital Nerve」では、予測不能なリリックと同時に、シンプルかつ純粋なトラックのドープさが際立っている。Bigg JusとEl-Pが交互に吐き出すリリックは、全て受け止めれば中毒死しかねないほどに危険で濃密だが、「Funcrush Scratch」で繰り広げられるMr. Lenのスクラッチもまた驚異的だ。
 本作は前年の『Funcrusher EP』の内容を拡大したもので、次作『Little Johnny From The Hospitul』にBigg Jusが参加しなかったため、結果的に本作はグループの完璧な布陣で発表された唯一のフル・アルバムとなった。ロウカス・レーベルは90年代後期にMos Defらを擁したイーストコーストの一大勢力と成長していく。そして、その先陣を切ったのがこの『Funcrusher Plus』なのだ。