Dale Hawkins – L.A., Memphis & Tyler, Texas (1969)
Carl PerkinsやRonnie Hawkinsを筆頭にして、ベテランのロカビリー・シンガーには60年代に入ってからスワンプ色の強い作品を発表する者が多い。特にRonnieのいとこでもあるDale Hawkinsが1969年に発表した『L.A., Memphis & Tyler, Texas』はその典型だ。南部のスタジオの空気や、カントリーとファンクに造詣の深いミュージシャンたちの力を借りて、本作はサザンロックの傑作と相なったのである。
かつてヒット曲「Suzy-Q」を放った古巣であるチェッカー・レーベルを1961年に後にしたHawkinsは、本作を録音するまではABCパラマウントやジュエルといったR&Bレーベルをプロデューサーとして転々としていた。カムバックを飾ったアルバムのクレジットには、盟友ともいうべきギタリストJames Burtonらとともに、若き日のRy CooderやBugs Hendersonも名を連ねている。
サウンドのコンセプトは、一見アルバムの名前が示すように明快なようだが、その実はなかなかに複雑で味わい深いものだ。今にもTony Joe Whiteが歌いだしそうな骨太なリズムとメンフィスらしいホーンセクションを軸に、なぜかリバーブの効いたHawkins自身のロカビリー的な声が乗り、独特の空気が生まれている。Taj Mahalが情熱的なハープを吹く「Hound Dog」や、「Baby What You Want Me To Do」といったクラシック作品へのファンキーな解釈は当時の時代性をこの上なく反映している。一方でBobby Charlesによる「La-La La-La」では、アシッド風な展開さえ見せる。Dan Pennとの共作であるブルース「Little Rain Cloud」はこうした作風の変化の極めつけのようなもので、まるでオーケストラが巻き起こす嵐のようなブギーは70年代のJohn Lee Hookerでさえ行きつかなかった領域だ。