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Gábor Szabó – Mizrab (1973)

 Gábor Szabóの音楽には、ジャズ・ギタリストという枠でくくってしまうことさえ惜しいと思わせる独創性がある。1973年発表の本作はSzabóにとってCTIレーベル移籍後の初アルバムであり、バークリー音楽大学時代からたびたびタッグを組んできたBob Jamesの強力なサポートが光る一枚でもある。
 メロウなフュージョン曲「Mizrab」はSzabóによるオリジナルで、Jamesのエレピ・ソロとBilly Cobhamの目が回りそうなドラムが聴きものだ。だが元来この曲は、67年のアルバム『Jazz Raga』のなかで、シタールとジャズ・ギターによるスピリチュアルなインタープレイで演奏されていたものだ。カバーではSeals & Croftsによるソフト・ロックの名曲「Summer Breeze」が印象深い。Szabóのプレイはリリカルで、Jamesのアレンジは控えめになりすぎずかといって感傷的になりすぎることもない絶妙なラインを的確に突いている。これぞ理想的なCTIのテイストだ。
 Dmitri Shostakovichによるピアノ協奏曲をジャズ向けに編曲した「Concerto #2」では、1分半に及ぶ静謐な導入の後に催眠性のあるギター・グルーヴをうならせる。そして突然クラシカルなテーマへ戻ったと思えば、そこから再びイージーリスニングなギター・ソロへと回帰する。
 オリジナル、ポップス、クラシックと素材は様々だが、どのトラックにおいてもSzabóとCTI両方の個性が息づいている。そして、それは巧みなアレンジャーJamesの手腕に拠るところが大きい。