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New York Dolls – New York Dolls (1973)

 New York Dollsのファーストは、後のパンク・ロックに多大な影響を与えた功績によってIggy & The Stoogesの『Raw Power』と並び称されることもある一枚だ。だがDollsの荒々しい演奏やデカダン小説のような猥雑さの歌詞にさらに大きな説得力を与えたのは、意外にもTodd Rundgrenだった。アルバムは全篇にわたってシンプルなロックンロールや力強いブギで構成されているが、同時に音の魔術師Rundgrenによる細やかな装飾のおかげで、実にドラマチックな作品にも仕上がっている。「Personality Crisis」ではJerry Lee Lewis風のピアノが、「Lonely Planet Boy」では酔っぱらったようなサックスが、そして「Frankenstein (Original)」では嵐を連想させるシンセサイザーが、Dollsの世界観を巧みに補強している。
 だがDollsの魅力の根幹そのものは、メンバーが衝突しあいながら繰り広げるスリリングなセッションにある。役者さながらに大仰な身振りで歌うシンガーDavid Johansenは、精神分析用語のような「Personality Crisis」をがなり立て、「Looking For A Kiss」のラストでは耳障りなキスのSEを入れ、観客を挑発する。これらを聴くだけでも、Johnny Thundersと恋人のように顔を近づけて歌いあうステージが目に浮かぶようだ。また、強力なビートの「Trash」や「Subway Train」は、Sylvain SylvainとThundersのギター合戦を味わうにはもってこいのナンバーである。
 Dollsの影響はニューヨーク・パンク・シーンだけでなく、イギリスや他ジャンルの音楽にも顕著に現れた。The Sex PistolsやThe Smithはもちろん、グラム・メタルの多くのグループが、Dollsの放つ危険なイメージを多かれ少なかれ取り入れた。