Jericho Jones – Junkies Monkeys & Donkeys (1971)
イスラエル・ロックの黎明期を代表するグループであるChurchill'sは、70年代の初頭にイギリスのA&Mレーベルとの契約を勝ち取る。しかし、イギリスで活動するにはいささか誤解を招きかねなかった彼らのバンド名は、一時的にJericho Jonesに変更された。本作は当時高まっていたプログレの波に乗った作品でもあり、サイケデリック主体だったかつてのサウンドはよりソリッドなものになっている。
エスニック趣味の演出をしばしば挟みつつも、タイトル曲の「Junkies Monkeys & Donkeys」をはじめとしてブルースを基調とした実直なプレイを聴かせる。特徴的なリバーブの効いたボーカルとファズ・ギターは世界中の初期プログレで聴き覚えのある特徴だが、Joe Walsh直系のイントロが印象的な「Man In The Crowd」や「Freedom」のファンキーなビートは後のハードな作風に直結するものだ。特に終盤の「Time Is Now」でさく裂する重量感は、Robb HuxleyとHaim Romanoの熟練したツイン・ギターの賜だ。アメリカン・ロックにも全く引けを取らないパワーを見せつつ、プログレとして難解な展開に走りすぎることもないため、本作はハードとアートの中庸を見事に捉えてみせた。
Jerichoがイスラエルのグループとしての真価を発揮するのは、国民的なエンターテイナーであるArik Einsteinとの活動を皮切りとしたヘブライ語でのロックを追求し始めてからだ。非英語圏ロックの宿命ともいえる命題に応えたJerichoは、イスラエルのポピュラー音楽の礎となったグループとして知られている。