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Gary Glitter – Remember Me This Way (1974)

 2019年の映画『JOKER』の中でGary Glitterの「Rock And Roll」が使用されたのは、ひとえに〈性的倒錯者による異様なクラシック〉を劇中のハイライトで流してしまう滑稽さのために過ぎなかったのだが、70年代は彼のパロディ的なパフォーマンスはもっと熱狂的に受け止められていた。『Remember Me This Way』は「Do You Wanna Touch Me?」や「I'm The Leader Of The Gang」といった彼の代表的なヒット曲が出揃った時期に発表された、実にパワフルなライブ・アルバムである。レインボー・シアターで行われたこのクリスマス公演は、もともとコンサート・フィルムとしてレコードとともに封切られる予定でもあったが、2005年まで陽の目を見なかった。
 本作では、Glitterの曲が持つアンセム的な魅力が、大ヒットしたシングル版と比べても大きく引き出されているのが伝わってくる。「Hello! Hello! I'm Back Again」のコーラスなどは、後にOasisのNoel Gallagherが「Hello」でそのまま拝借している。「Rock And Roll, Part 1 & 2」のタイトなビートの中で行われるコール・アンド・レスポンスも実に煽情的だ。
 あえて最もGlitterらしい場面を選ぶとするなら、それはきっと「I Love You Love Me Love」だろう。コンサートの最後を飾ったこのバラードを、Glitterはさらに仰々しいララバイ調に仕上げている。しかし、レコードではこの後にテーマ・ソングであるスタジオ録音曲の「Remember Me This Way」が続く。
 以降は他のグラム・ロッカーと同様にパンクの波を受けて低迷したGlitterだが、90年代の『Leader II』でも21世紀に発表された『On』でも、その堂々とした音楽的アプローチが失われていなかったこと自体は記憶にとどめておきたい。