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Hampton Hawes – Everybody Likes Hampton Hawes (1956)

 コンテンポラリー・レーベルのオーナーにして本作のプロデューサーでもあるLester Koenigは、このアルバムが生まれる何年も前からHampton Hawesの演奏に惚れ込んでいた。Hawesが兵役でアメリカを離れることになったためレコーディングの実現には時間がかかったが、その間にもHawesは、駐屯先だった日本の戦後のジャズ・シーンに多大な影響を与えている。
 『Everybody Likes』はKoenigの手掛けたHawesの初期三部作のひとつだ。即席のコンサート・ホール風に演奏を捉えるような工夫をこらした『Volume 1』に比べると、本作はスタンダード・ナンバーに重きを置いた、より端正な仕上がりだ。だが、西海岸風にも東海岸風にも弾ける彼の自在なテクニックはしっかりと冴えわたっている。「Embraceable You」ではChuck ThompsonとRed Mitchellによる抑制のきいたリズムをバックに、息をのむような美しさのタッチを聴かせ、「I Remember You」では流麗さはそのままに、実にテンポのいいプレイを展開させる。
 ハード・バップのナンバーも見事で、「A Night In Tunisia」でのファンキーなドライブはもちろん、Hawesのオリジナル「Coolin' The Blues」には『Volume 1』の名演「Hamp's Blues」にも負けない技巧とひらめきが満ちている。
 薬物との戦いでキャリアに大きな空白を抱えたHawesにとって、50年代の演奏は特に彼の若々しさと力強さを感じることができる。だが、演奏の端々に生まれる独特の個性は、60~70年代になっても失われることはなかった。