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Miles Davis – E.S.P. (1965)

 1965年1月に行われたMiles Davisの新作アルバムのためのセッションには、あっと驚くような秘密兵器が用意されていた。当時クインテットに参加したてだったWayne Shorterのずば抜けた作曲センスに目を付けたDavisは、彼が書き溜めていたオリジナルの作品ノートをレコーディングに持参させたのである。
 ノートからは、目まぐるしい疾走感を湛えたタイトル・トラックと、夢のように美しいバラード「Iris」という対照的な2曲が採用されている。Davisは若きShorterの作品を最大限尊重し、大幅なアレンジを加えることなく録音したというが、これもまた異例のことであった。
 「E.S.P.」でのShorterの堂々としたソロも素晴らしいが、もう一人の若手であるTony Williamsの自由ではつらつ●●●●としたドラム(「Agitation」)も印象深い。ピアニストのHerbie Hancockが書いた「Little One」の中では、Davisらしい抑制された独特の緊張感が漂っており、「Eighty-One」で聴かれるRon Carterのたゆたう●●●●ようなベース・ラインは、Hancockの名曲「Maiden Voyage」のリズムを思い起こさせる。
 『E.S.P.』は、若き才能を得たDavisのクインテットが新たなステップを踏み出した証であり、メンバーもまた本作を経たことで大きな飛躍を見せた。Hancockは『Maiden Voyage』、そしてShorterは『The All Seeing Eye』と、いわゆる新主流派と呼ばれる傑作が立て続けに誕生していったのである。