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Mike Love – Looking Back With Love (1981)

 Mike Loveの最初のソロ・アルバム『Looking Back With Love』は、Dennis Wilsonの『Pacific Ocean Blue』、そしてCarl Wilsonのファーストに続くようにして発表された。Bruce Johnstonが一曲参加した以外、The Beach Boysのメンバーは関わっていないのだが、本作はともすれば同時代のThe Beach BoysよりもThe Beach Boyらしいサウンドに仕上がっているのが面白い。それゆえに60年代へのつまらないノスタルジーだとこき下ろされることも多い一枚ではあるが、ロック史上最も美しいハーモニーを生み出してきたLoveの魔法のような歌声には心惹かれるものがある。
 タイトル・トラックである「Looking Back With Love」は、心地よいコーラスとシンプルなピアノが生む穏やかな雰囲気と、時おり現れるロック・ギターが印象に残る。「On And On And On」はABBAがThe Beach Boysへのオマージュとして書いたナンバーをLoveが逆輸入的に歌ったディスコ・ソングだ。
 「Over And Over」ではレゲエにも手を出しているものの、アルバムの中で特に興味を引くのはカバー曲である。Howard Greenfield、Neil Sedakaのコンビが書いた「Calendar Girl」は、Craig Thomasのサックスをフィーチャーした、本作でも特に開き直ったような一曲だ。それに続けてLoveは、Brian Wilsonのお気に入りでもある「Be My Baby」を歌い上げる。
 The Beach Boysのソロ・ワークは陽の目を見ないものが多いが『Looking Back With Love』もその一枚だ。CD化はされておらず、20年代に入って本作はようやく配信で広く聴くことができるようになった。