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Warren Wolf – Incredible Jazz Vibes (2005)

 新人のジャズ・ヴァイブ奏者をWes Montgomeryになぞらえて売り出そうとするのは、普通に考えて正攻法とはいえないだろう。しかし若干20代半ばのWarren Wolfが、ベテランのピアニストMulgrew Millerらをぐいぐいとけん引する『Incredible Jazz Vibes』を発表したことは、2005年のジャズ界にとって最もホットなニュースだった。バークレー音楽大学を卒業して同校の講師をしばらく務めた後、Wolfはこのアルバムで国際的なステージに飛び出そうとしていた。
 『Incredible』には定番からコアにいたるジャズ・カバーと、ソウル・ヒッツ、そして遊び心さえ感じるオリジナル曲があった。あいさつ代わりの「I Hear A Rhapsody」の目が回るようなマレットのタッチのあと、「Overjoyed」ではStevie Wonderの曲をグルーヴィーに料理している。一方で、バラード「(I'm Afraid) The Masquerade Is Over」におけるゆったりとした抒情や、ソロによる「Reflections」の静かな美しさには、テクニックにとどまらないWolfのメロディ・センスがあふれているようだ。
 「Howling Wolf」では、「Reflections」の静寂を破るようにKendrick Scottのドラムが爆発し、モーダルなプレイが次々と展開されていく。だがこのアルバムの幅はもっと広い。「Four On Six」ではMontgomeryのオリジナルに忠実なプレイであり、「Why Is There A Dolphin On Green Street」は一見ふざけたタイトルだがその実1950年代のクール・ジャズへのたしかな敬意が聴いてとれるのだ。