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The Rolling Stones – Between The Buttons (1967)

 The Rolling Stonesが1967年に発表した『Between The Buttons』は、前作『Aftermath』の〈全篇Jaggar-Richardsによるオリジナル曲〉というスタンスを受け継いだ傑作だが、グループは小さからざる内憂を抱えていた。66年夏のツアー中に倒れたBrian Jonesがただでさえ不安定な精神状態だったうえに、そんな彼をおいてメンバーたちがハリウッドのRCAスタジオの録音作業に入ってしまったことも、Jonesの負のスパイラルに拍車をかけていった。とはいえ、皮肉にもバンドの旺盛なサウンド・メイキングを実現した最大の功労者は間違いなくJonesである。
 耳に残るイントロの「Yesterday's Papers」では「Lady Jane」に続いてJack Nitzscheのハープシコードを導入した。「Backstreet Girl」で情緒たっぷりなアコーディオンを披露しているのはNick DeCaro。Nicky Hopkinsの古風なピアノに始まる「Cool, Calm And Collected」では、Jonesのバンジョーとカズーが絶妙な味付けをする。本作では音楽的な多彩さが目立つ一方、R&BバンドとしてのStonesもしっかりと健在で、「Please Go Home」ではサイケを少々交えつつも懐かしのジャングル・ビートにふたたび挑戦している。「Complicated」におけるCharlie Wattsの鋭いドラムや、「Miss Amanda Jones」でのKeith Richardsのルーズなギターも相変わらず鳥肌ものだ。The Beatlesに対抗するようなサウンドに仕上がった「Something Happened To Me Yesterday」では、Jonesがいくつものホーンを担当している。
 米国盤には強力なシングル曲「Let's Spend The Night Together」と「Ruby Tuesday」が収録された。前者の中間部におけるパーカッションは、警棒をJaggarが鳴らしているのだが、これは録音時スタジオに入ってきたパトロール中の警官から拝借したものだった。Stonesのなかでも特に享楽的なナンバーであることを思うと、まるで当てこすりのようにも感じられる。