The Routers – Let's Go! With The Routers (1963)
インスト主体のサーフ・ミュージックと一口に言っても、そのテーマは決して十把ひとからげなどではない。その手のアルバムを年代順に並べてみるがいい。サーフ・ギターの王様Dick Daleが『Checkered Flag』で機械油まみれの姿を披露したのを皮切りに、64年以降はジャケットに車が登場する割合がグッと高まっており、若者の志向が徐々にホットロッドへ枝分かれしていったことがうかがえる。
Michael Gordonによって結成されたThe Routers。当時のポピュラー音楽における多くのグループと同様、クレジットにハッキリしない部分が多いが、その正体はThe Wrecking Crewで知られるドラマーEarl Palmerや、Henry Manciniのオーケストラで活躍したサックス奏者Plas Johnsonといったスタジオ・ミュージシャンたちだ。
「Let's Go (Pony)」はThe Routersの中でも特に知られた一曲だが、それは軽快なメロディというよりも、イントロで聴かれるあまりにも有名な手拍子と掛け声のリズムに因るところが大きい。楽器を持たなくても再現できるこのフレーズは、フットボールの応援のチャントに持ち込まれたことで爆発的な広まりを見せた。The Venturesのフェイバリットになったことでも有名で、カバーはもちろん、ライブでは「Wipe Out」の間奏の中にも印象的に取り込まれている。ほかにも縦横無尽にオルガンが駆ける「Let's Dance」や、スポーツの情景を描いた「Half Time」など、サウンドの質はいずれもすばらしいものばかりで、ノリのいいギター・ポップの要所にサックスの持つソウル感覚がサンドイッチされている。
抜けるような青をバックにいきいきと笑うチアリーダーの姿をあしらったアートワークも相まって、本作はスポーツ・ミュージックの聖典となった。収録時間は30分にも満たないが、サーフボードやクーペに興味のない若者でも存分に楽しむことができる。