見出し画像

Billy Lee Riley – Still Got My Mojo (2009)

 真の傑作である『Still Got My Mojo』がリリースされて間もない2009年の8月に、Billy Lee Rileyは75歳でこの世を去った。本作の発表から半年もたたないうちに、がん闘病のアナウンスと死去の報が立て続けに舞いこむかたちとなったのは悲しむべきことだが、『Still Got My Mojo』の熱いロカビリー・サウンドには、そういった死の予感や暗い苦しみのようなものは、カケラでさえまとわりついていない。
 97年のアルバム『Hot Damn!』がグラミー賞にノミネートされたり、かのBob Dylanが熱い賛辞を送ったことを考えても、Rileyがいかに偉大なオリジナルであったかを語りきることなど到底できないだろう。マルチ奏者としての巧みな技術はさることながら、特に野蛮でパンキッシュなボーカルやブルースへの深い造詣は本作にもしっかりと息づいている。オープニングの「Havin' A Whole Lot Of Fun」で、Rileyは信じられないパワーとスピードで若いThe Bellhopsのメンバーをけん引する。「Mojo Man」は往年を思わせるヴードゥー・ソングで、「Rooster Blues」は深みのあるハープとEmilio Garciaのギターの絡みが素晴らしい一曲。「Ballin' The Jack」はRileyのカムバック以来何度も録音してきたナンバーだが、演奏とボーカルどれをとっても本作がベストと言える出来である。
 Rileyの作品には、比較的上品にまとまったものやテクニックにフォーカスしたものもある。もしも50年代のサン・レーベルに残された伝説的な録音と同じエネルギーを感じたいなら、あなたが次に聴くべきアルバムはこれだ。