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Edgar Broughton Band – Keep Them Freaks A Rollin' (2004)

 Edgar Broughton Bandの1969年のデビュー・アルバム『Wasa Wasa』には、彼らがまだブルース・バンドだったころの面影がよく残っている。70年代以降はオーケストラやカントリー・ソングなど、創造的なクロスオーバーが注目されていったが、60年代の彼らはDon Van Vlietと同じことをやろうとしていたのだ。
 2004年に発表されたこのライブは、『Wasa Wasa』と同じアビー・ロード・スタジオで、69年の冬に録音された。「Smockestack Lightning」は「Evil」と同様にHowlin' Wolfの代表曲のカバーで、テンポを落としてヘヴィに生まれかわったサウンドとEdgarの強烈なボーカルが見事に決まっている。興味深いのは「What Is A Woman For?」や「Refugee」といったセカンド以降のアルバムの収録曲もレパートリーとして披露されていることだ。特に後者などは、スタジオ版において非常に前衛的だった曲調が本作の時点ですでに出来上がっていた、という驚きの発見がある。「Yason Blues」はとてもシンプルなブルースで、ハープを吹いているTerry Yasonという人物は、後に「There's No Vibrations, But Wait!」の制作にも貢献している。
 とはいえファンにとって一番嬉しいのは、アルバムには収録されなかった重要なシングル曲が聴けることだろう。Vlietの名曲「Dropout Boogie」は、Steve Broughtonのパンチの効いたドラムとArthur Grantの骨太なベースに、Edgarのフリーキーなギターが乗った、ある意味で実にまっすぐ●●●●なナンバーだ。この曲はシングル化の際にThe Shadowsのインスト曲と組み合わされ「Apache Drop Out」というタイトルでリリースされた。白眉はライブの定番曲だった「Out Demon's Out」のロング・バージョンで、ひたすらに観客を煽るEdgarの姿は、まさにアナーキズムを唱える扇動者のようである。