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Jimi Hendrix – Band Of Gypsys (1970)

 当代最高のパワー・トリオExperienceを1969年に解散したJimi Hendrixは、キャリア初期にPPXレーベルと交わしていた契約(Hendrixにとって非常に不利な内容だった)が原因で、新作のアルバムを発表する必要に迫られていた。70年に発表されたこのフィルモア・イーストのライブ盤は、ドラムのBuddy MilesとベースのBilly Coxという新鮮な編成で、さらに収録曲のすべてがそれまでに無かった新曲で固められているのもポイントである。
 69年の夏に行われたウッドストック・フェスティバルでは、Gypsy Sun & Rainbowsという大所帯のグループを率いていたHendrix。再び3人編成に回帰した本作では、「Who Knows」のイントロが予感させるように、グルーヴを重視したソリッドなファンクを展開していく。また、Milesはボーカルとしても大きく貢献しており、Hendrixとの息の合ったコール・アンド・レスポンスや力強いスキャットが魅力的だ。
 白眉は心に重くのしかかってくる反戦歌「Machine Gun」だろう。Coxが奏でるベース・ラインのうねりと、Hendrixのサイレンのようなソロは聴く者の不安を煽る。さらに、機関銃や軍隊マーチを再現するMilesのドラムは、死が後ろから迫ってくるような戦場のリアリズムをもたらしている。
 「Changes」はMilesのペンによるナンバーで、後に「Them Changes」とタイトルを変えてMilesの生涯のレパートリーとなった。愛をテーマにした「Power Of Love」と「Message Of Love」ではHendrixのサイケデリックなギターがさく裂する。そしてシンプルな「We Gotta Live Together」でバンドは名前の通り観客と一体になり、アルバムは感動的なエンディングを迎える。