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The Stone Roses – The Stone Roses (1989)

 1980年代の終わりにリリースされたThe Stone Rosesのデビュー・アルバムは、この若きマンチェスターのバンドを瞬く間にトップの座へと押し上げた作品だ。彼らは60年代ロックの創造的なサウンドにレイヴ・シーンの開放的な文化とビートを統合し、ボーカルのIan Brownの超然とした態度とJohn Squireの芸術的なまでに美しいギターは、Jaggar-Richards以来の名コンビとなった。それと同時に、彼らの音楽は実力のあるリズム隊によって体現されてもいた。
 ゆったりとしたGary "Mani" Mounfieldのベースの導入で始まる「I Wanna Be Adored」は、造りこそミニマルだがまるで夢の世界を見るようなオープニングだ。Brownは沸き上がる自己顕示の思いをつづっているが、これはOasisのファースト・アルバムの一曲目でも(彼らが意識していたかはともかく)、Rosesよりさらに不遜なスタイルで踏襲されている。「She Bangs The Drums」や「Made Of Stone」のキャッチーなメロディは今聴いても魅了される名曲だ。その一方で「Waterfall」のトラックをそのまま逆回転させた「Don't Stop」や、民謡「Scarborough Fair」のメロディに乗せて英国女王を真っ向から批判する「Elizabeth My Dear」のような、古典ロックのスピリットを強く感じさせるナンバーもある。
 オリジナルでは、Alan "Reni" Wrenの伸びやかなドラムがけん引する8分間の感動的な大曲「I Am The Resurrection」がアルバムのラストを飾っていた。これだけで十分見事なエンディングだが、CDや米国盤では「Fools Gold」や「Elephant Stone」といったヒット・シングルが追加されている。いずれのバージョンを聴こうが、アルバム『The Stone Roses』は崇拝に値する一枚である。