The Bunch – Rock On (1972)
英国フォーク・ロックの雄Fotheringayは解散し、Richard ThompsonとAshley HutchingsはFairport Conventionをすでに脱退した後だったが、一見バラバラの彼らが本作のようなロックンロール・セッションのために一堂に集まった、というのは面白い事実である。彼らはトラッドと同じくらいアメリカン・オールディーズを愛する若者であり、コンサートのアンコールではJerry Lee Lewisのような懐かしのナンバーが飛び出すこともあった。
当時ヴァージン・レーベルが完成させたばかりだったマナー・スタジオを初期試用の名目で借りたおかげで、企画の発案者だったTrevor Lucasは本作にかかるレコーディング費用を抑えることができた。そのうえオリジナル盤のジャケットには、Gerry Conwayのドラム・テクニックが冴えた「Let There Be Drums」を収録したソノシートがオマケとして付いている。
出来上がったアルバムは、まさに名曲の洪水である。LucasがElvis Presleyをのびのびと歌う「Don't Be Cruel」をはじめ、Sandy DennyがBuddy Hollyに挑む「That'll Be The Day」、そしてLinda Thompson(当時は結婚前のPeters姓だった)による気軽なR&Bナンバー「The Loco-Motion」などが収められている。Richardは全編で力強く誠実なギターを弾いており、カントリーの名曲「Jambalaya (On The Bayou)」、Chuck Berryの「Sweet Little Rock 'N' Roller」での演奏は、今までのフォーク作品だけでは知りえなかった彼の一面を教えてくれる。こうしたギタリストとしての彼のルーツは、『Still』のような後のソロ・ワークの中でもたびたび振り返られることになる。