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Luther "Snake Boy" Johnson – Mud In Your Ear (1973)

 1967年9月に行われたMuddy WatersのNY公演に参加したギタリストLuther "Snake Boy" Johnsonは、現地でスタジオ・レコーディングの機会を得た。リーダーであるWatersが自らサイドマンを買って出たセッションは、しばらく陽の目を見なかったが、後に『Mud In Your Ear』、『Chicken Shack』という2つのタイトルで、70年代を代表するジャズ・レーベル〈ミューズ〉から発表された。
 ブルースの歴史上で最も数多くの名人が在籍していたバンドは、間違いなくMuddy Waters Bandだった。『Mud In Your Ear』は、前年に加入したばかりだったJohnsonの若き才能と、本作のレコーディングを最後にバンドを脱退したFrancis Clayの熟達したドラム、そして晩年のOtis Spannのピアノが、王道的なシカゴ・ブルースの熱を放っている。常に人の出入りがあったバンドの中で、特にバランスのとれたメンツだと言っても過言ではない。
 Big Bill Broonzyをはじめシカゴで古くから愛されてきた「Diggin' My Potatoes」は、跳ねるようなリズムの中でGeorge Bufordのハープが光り、Johnsonのハスキーな歌声が、えも言われぬやさぐれた緊張感を醸し出す。これぞシカゴ・バンドの理想形だ。また、「Sting It」や「Mud In Your Ear」のような、誰もが知るブルースの定番フレーズを元にしたさりげないインストも本作の魅力である。Bufordは一部でボーカルも執っており、「Watch Dog」は50年代のクラシックな雰囲気を湛えた見事なスロー・ブルースに仕上がっている。