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Tom Petty And The Heartbreakers – Tom Petty And The Heartbreakers (1976)

 Tom Pettyのファースト・アルバムには彼の最も有名な曲「American Girl」が収録されているが、意外なことにアメリカ国内ではLPとシングルのいずれも発売当初は注目を浴びなかった。本作を最初に評価したのは、骨太なサザン・ロックが好まれていた彼の地元フロリダではなく、英国の聴衆だった。
 古典的でハードなロックンロールにThe Byrdsの繊細なギター・ワークをブレンドしたPettyのサウンドは、新鮮でありながらどこか懐かしさを感じさせる。それだけにThe Heartbreakersはパンクやニュー・ウェーブのカテゴリに入れられることもあるし、パワー・ポップの先駆けと捉える者もいる。
 「Rockin' Around (With You)」ではロカビリー風のシャッフルとシンセを同居させ、「Breakdown」はムードたっぷりのギターとコーラスが、Pettyの放つ色気を何倍にも増幅させている。また、特にイギリスで受けた曲が「Anything That's Rock 'N' Roll」だが、The Rolling Stonesに似たルーズな雰囲気を聴けば、それも納得といえるだろう。「Strangered In The Night」にはPettyのライバルだったDwight Twilleyがバック・ボーカルで参加している。
 「American Girl」はMike CampbellとPettyによるリズム・ギターのユニゾンとStan Lynchの鋭いドラムが見事な対比を生んだ名曲だ。前述のとおりこのシングルはイギリスでしかヒットしなかったが、アルバムそのものはじわじわと評判を高め、米国のチャートにおよそ1年遅れで登場した。