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Incredible Hog – Volume 1 (1973)

 Incredible Hogは、Jim HolmesとKen GordonらによるSpeed Auctionという学生バンドから発展した。バイク事故によって欠員となったオリジナルのドラマーの枠にはTony Awinが加わり、トリオの体制を整えた彼らは、日々ジャムに明け暮れながら契約の当てを求めてロンドンの街をさまよっていた。中小レーベルのダートにデモ・テープを持ち込み、オフィスに居座りを決め込むことで半ば無理やりビジネス・パートナーとなった彼らは、全力のブルース・アルバムを吹き込む。それがこの『Volume 1』だ。
 不穏なSEを用いたサイケデリア「Tadpole」や、一筋縄でいかない歌詞の「There's A Man」のようないかにもプログレ然とした曲もあるが、アルバムのほとんどはヘヴィネスを追求した骨太なブルース・ロックに彩られている。冒頭の「Lame」はノリのいいブギ・ナンバーで、「Wreck My Soul」はGordonの誠実なギターがセッションをけん引していく。「Walk The Road」ではアコースティックにも挑戦しているものの、サウンドはやや平凡である。やはりこの彼らの真骨頂は、Holmesのベースのグルグルうねるグルーヴとギターが見事に絡み合った、「To The Sea」のように思い切りのよいヘヴィ・ロックだ。
 本作がリアルタイムで評価を受けることも、『Volume 2』が出ることも無かったが、同時期のバンドと比べると再発の多さには恵まれた一枚といえる。中でも2011年のリイシューには、クールな未発表曲「Burnout」や「Going Down」の素晴らしいカバー・バージョンが含まれており、必聴である。