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Paul Desmond – Pure Desmond (1975)

 ピアニストDave Brubeckの相棒として50年代から活躍し、その繊細な音色で絶大な人気と高い評価を獲得してきたサックス奏者のPaul Desmond。彼のもう一つの魅力として忘れがたいのは、Jim HallやGabor Szaboといったギタリストを伴った編成による演奏だ。
 Desmondは1977年に亡くなったため、『Pure Desmond』がCTIレーベルから発表された75年は彼のキャリアで言えば晩年にあたる。そのジャケットだけ見ると思わずグルーヴィーなジャズ・ファンクでも想像してしまいそうになるが、中身はタイトルとたがわず、実に端正で澄み切ったクール・ジャズの傑作だ。選曲はゆったりとしたバラードを中心とした古典で占められており、Ron CarterとConnie Kayによるリズム隊がそれを的確なバッキングで支えている。「I'm Old Fashioned」のイントロでは「The Queen's Fancy」のフレーズをさらりと引用している。(細かいことを言うとこの曲はKenny Clarke時代のナンバーではあるのだが)これはMJQのファンに向けたさりげないサービスだ。
 本作で特に印象的なのは、当時アメリカではあまり知られていなかったカナダ出身のギタリストEd Bickertが、ソロ、アンサンブルを問わず驚くほどに美しいプレイを聴かせていることだ。「Nuages」におけるリリカルなトーン、陽気な「Everything I Love」での秀逸なDesmondとのコンビネーションなども素晴らしいが、カルテットとして最も優れているのは「Squeeze Me」だろう。優しくスイングするDesmondのサックスと、3人の演奏が絶妙なバランスでかみ合った名演で、Desmond本人もこのテイクを大変気に入り、一日に5回聴き返しても飽きないほどだ、と語った。