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Ellis Larkins – Perfume And Rain: Solo Piano (1955)

 Ella FitzgeraldやChris Connorの名唱を支えたことで知られるピアニストEllis Larkinsは、伴奏者としてのイメージが強いプレイヤーである。そんな彼の完全なソロ作品である『Perfume And Rain』は、Art Tatumの薫陶を受けた繊細かつテクニカルな美学と、スイング・ジャズで培われた芯の強いグルーヴが両立した、逸品中の逸品だ。
 10インチ盤だったためわずか20数分のプレイ時間だが、本作で奏でられる一音一音のすべてが豊かだといえる。スタンダードの「Moonglow」で聴かれる絶妙な低音のイントロ、その後にリリカルなタッチへ続いていく流れはLarkinsの真骨頂で、「Glad To Be Unhappy」は程よい緊張感をもたらす左手と優しく暖かい右手が実に美しいコントラストを同時的に生み出している。「Perfidia」はAhmad Jamalも得意としたナンバーで、Larkinsはソロ・ピアノらしい優雅なアレンジでまとめ上げている。「Perfume And Rain」は特筆に値するオリジナルで、物悲しいメロディの中に思わずハッとするようなフレーズがいくつもちりばめられた名演だ。
 職人気質だったLarkinsが主役を張る音源は決して多くないが、そんな中でも本作は彼の純度100%のピアノを味わえるという点において特に重要なアルバムである。彼は60年代にいったん第一線を退いてしまうが、70年代以降はコンサートを中心に再び活動を活発化させた。