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The Frankie Miller Band – The Rock (1975)

 1972年のデビュー以来セールスでは苦戦しつつも一貫して高い評価を受けてきたFrankie Millerは、75年の『The Rock』ではじめてEdwin Hawkins SingersやThe Memphis Hornsといった本格的なアメリカン・ソウル・サウンドを取り入れた。シングルとなった「A Fool In Love」や「The Heartbreak」からも分かるように、ファンキーで勢いのあるブラス&コーラスがMillerのボーカルが持つ魅力を120%引き出している。
 〈ザ・ロック〉とはサンフランシスコにあるアルカトラズ刑務所の別名だ。Foghatがセカンド・アルバムでやったおふざけ(古くはアトランティック・レーベルもやった古典的な洒落である)を思わせるジャケットではぐらかしてはいるが、本作のタイトル・トラックは、実は真面目な内容の歌だったりもする。レコーディング・スタジオがアルカトラズからほど近い場所にあったこともあり、Millerは塀の向こうに生きる男たちに思いを馳せながら、自由についてひとり哲学を巡らせていく。そしてその切ない歌い方は、どこか「The Dock Of The Bay」のOtis Reddingを思わせる。
 本作では最もハード・ロックに寄った「Ain't Got No Money」ではHenry McCulloughのギターが聴きものだ。「I Know Why The Sun Don't Shine」は力のこもったブルースで、「A Fool In Love」と並んでAndy Fraserが共作者としてクレジットされた曲でもある。