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Thelonious Monk – Live! At The Village Gate (1985)

 驚きと感動にあふれるザナドゥ・レーベルの秘蔵音源カタログ〈ゴールド・シリーズ〉。ジャズの巨人たちが人知れず残してきた遺産の中でも特に素晴らしい一枚が、1963年のヴィレッジ・ゲートで録音されたThelonious Monkのステージだ。ESPなどでエンジニアを務めたRichard Aldersonによる私家録音をオーナーのDon Schlittenが発掘したもので、音質はモノラルなうえにテイクによっては不完全なものも含まれている。とはいえ、当時コロムビアに移籍したばかりだったカルテットの、まさに全盛期の姿が捉えられた貴重なアルバムだ。不満などはこの際二の次にして耳を傾けよう。
 冒頭部分が現存していないため、「Rhythm-A-Ning」はCharlie Rouseの朗々としたサックス・ソロの部分から幕を開ける。John OreとFrankie Dunlopが刻む疾走するようなリズム、「Thelonious」のテーマを引用したソロは、同時期の『Two Hours With』のバージョンを思わせる。しかし本作のMonkは輪をかけて好調で、遊び心と外連味に満ちたタッチを駆使して、観客を執拗に煽り立てているのが実に楽しい。
 複雑なリズムが生む緊張感がたまらない「Evidence」、そしてRouseのスイング感覚が発揮される「I'm Getting Sentimental Over You」や「Jackie-Ing」を聴けば、当時のカルテットがいかに完璧なバランスを保っていたかが改めて分かる。対して、二度に分けて繰り出される「Body And Soul」ではMonkのソロ・ピアノの美学がじっくりと堪能できる。