見出し画像

Horace Silver – Song For My Father (1964)

 1964年、長年活動してきたクインテットをいったん解散したHorace Silverは、自身の音楽を見つめなおそうと南米へ向かった。その時に接したラテン音楽の情熱的なリズムは、彼に最大のヒット曲「Song For My Father」のアイデアをもたらしている。
 もともとファンキーなブルースを演れば右に出るもののなかったSilverだっただけに、シンプルなピアノのトーンと異国情緒あふれるボサノヴァのブレンドからなるこの曲は、新鮮でありつつも同時に彼らしさを感じさせる。新たにクインテットに迎えられ、熱っぽいソロを聴かせているJoe Hendersonは、前年に名曲「Blue Bossa」を放ったばかりの気鋭だった。Hendersonは作曲家として「The Kicker」という素晴らしいハード・バップ・ナンバーも提供している。
 旧編成の「Calcutta Cutie」や、スペイン語で〈What's Up?〉を指す「Que Pasa?」など、エキゾチックな名演が中心となるなかで異彩を放つ「Lonely Woman」は、珍しくトリオで録音された美しいバラード。これはポルトガル系移民の父にトリビュートされたタイトル曲と同様に、Silverが母親との思い出に捧げた一曲だ。
 『Song For My Father』はSilverの新生クインテットの門出にふさわしい傑作だ。そのため旧カルテットの演奏はほとんどがアウトテイクになってしまったが、現在ではCDのボーナス・トラックとして補完されている。