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Gerry And The Pacemakers – How Do You Like It? (1963)

 リヴァプール出身のロック・バンドといえば今も昔もThe Beatlesだ。しかし、イングランドの強豪サッカー・クラブ〈リヴァプールFC〉のサポーターたちが名曲「You'll Never Walk Alone」を合唱する時、リヴァプールは正真正銘Gerry And The Pacemakersのものになる。1963年に全英1位の大ヒットを果たしたこの曲は、意外にも原曲はブロードウェイ・ミュージカルの挿入歌である。The PacemakersはGeorge Martin流の美しいストリングと力強いリズムを融合させ、さらにそこへGerry Marsdenの感動的なボーカルを見事に組み合わせた。マージー・ビートのお手本ともいえる「You'll Never Walk Alone」はたちまちリヴァプールFCのアンセムとして受け入れられ、60年もの長きにわたって歌い継がれている。
 同年発表の本作は、彼らが立て続けに傑作シングルを出していたころのLPであるにも関わらず、タイトルに反して「How Do You Do It?」が収録されていないといった矛盾も抱えている。だが、バンドの持っていた音楽の多様性はしっかりと反映されており、じゅうぶん満足のいく内容といえる。「Mabellene」や「The Wrong Yo-Yo」といったR&Bの名作はMarsdenのソウルが爆発し、「Jambalaya (On The Bayou)」ではカントリーの分野もカバーしてみせた。他にも翳りのあるラテンの風味を取り入れた「Summertime」、The Beatlesにも負けないやかましさの「Slow Down」が聴きどころだ。
 アルバムはシングル群と同様にヒットし、UKチャートの2位に躍り出た。アメリカでは本作からオミットされていた曲も収録された編集盤が発売されたりもしたが、初めて彼らの足跡をたどるならシングル集のようなコンピレーションを聴くのが手っ取り早いだろう。