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Jutta Hipp with Zoot Sims (1956)

 1956年。ようやくホームシックも落ち着いてきたJutta Hippは、ニューヨークの有名クラブ〈ヒッコリー・ハウス〉に継続的に出演するようになり、そんな中で立ち上がったのが本アルバムのセッションだった。もともとドイツ人のHippをはるかアメリカまで招いたのはLeonard Featherで、彼は彼女のレコードに熱っぽいライナーまで寄稿しているのだが、本作のレコーディングに新進気鋭のサックス奏者Zoot Simsをジョイントさせたのは、当時その演奏に惚れ込んでいたAlfred Lionその人だった。
 『Jutta Hipp with Zoot Sims』は名前の通りのツイン・リーダー・アルバムになるかと思われたが、Simsの推薦で参加したJerry Lloydのトランペットが本作を芳醇で豊かなサウンドに仕立てている。コンサートではLennie TristanoやBud Powellの影響をうかがわせていたHippも、ホーンの厚みを受けた見事なハードバップを聴かせている。
 数えきれない名盤(Hippの『At The Hickory House』もその一枚)を支えたEd Thigpenのドラムと、後にアフリカンに大きく傾倒するAhmed Abdul-Malikのベースをフィーチャーしたクインテットは、人種も国籍もバラバラながらも「'S Wonderful」のような定番曲をごきげんにスイングする。Simsのその後の活躍は言うまでもないが、当のHippはブルーノート以降は録音を残すことは無かった。